「構成的権力 ? 近代のオルタナティブ」2 | 宮本浩樹のブログ ― アーカイブ ―

「構成的権力 ? 近代のオルタナティブ」2


5)革命と労働の構成(フランス革命)

革命の時間はひとつの絶対である - マキアヴェリのいう力の意志の絶対であり、それは始源において構築される。

階級闘争はフランス革命の源ではなく、その結果なのだ。

主権の肩書きと主権の行為、人民階級はこの分離を拒否したのである。

フランス革命を終える時、時間を開くのは永続革命と共産主義革命を意味し、時間を閉じるのは自由主義、あるいは反動を意味する。

ヘーゲルは一つの結果だ。構成的権力を歴史進化の原理に変えることを目指す短期間の、しかしきわめて密度の濃い作業の結果である。 ? 構成的権力の包摂というパラダイム。

権力とは時間的なもの、多数の時間性を総合する活動だとみなしてこれを人間化し、主権の概念を作り直す。・・・権力の多数の機能を統一し、融合し、発展させることが、今では多数者の手にゆだねられる。時間制は逆転する。

労働の社会的秩序が構成される長期の次元と、革命の時間の短期の次元、この両面において時間をつかまえている、 トックヴィル。

革命が労働の構成を目的とする時、革命は到達不能のものであることが示される。・・・
以後は永遠に「革命を終える」事は不可能となる


6)共産主義の欲望と弁証法の復興

構成的権力を社会全体に浸透する力として構築するのは、近代資本主義である。
近代的な産業の力がそれを市場の当事者と社会全体に分配して、その双方を主役にするとともに、集合的資本を世界の構成のラディカルで荒々しい不断の過程のリュクルゴス[スパルタの伝説的立法者]に仕立て上げる。

資本のもとへの社会の包摂の不断の過程。

マルクス的な構成的権力の概念
権力と協業のダイナミックな関係であり、必然と自由の統合として姿を現し、力と契約、支配と膂奸∈?靴閥╋函?童△罰很燭箸い辰審鞠阿?尊櫃砲屬弔?蟾腓ぁ?畭紊砲箸辰討?錣襯?襯織淵謄?屬鯆鷦┐垢訝賄世修里發里箸靴禿仂譴垢襦

近代社会が形成されるダイナミックな始源的状態である蓄積の過程で暴力と協業が相互にかつ交互に関係しあうという事実。

一連の準備的労働によって構成されながら、結局自由な展開が可能になるといった ? ひとつの生産的共同体 ? 構成的権力の表現のモデル。

共産主義とは ? ある解放であり、ラディカルな実践的行為であり、それは自由を欲望と、欲望を社会性と、社会性を平等性と結合するもの。

1917年7月以降 ? 蓄積を押し進めて、社会的生産を管理することができるような再統合された労働者階級の存在を物質的に可能にしなければならない。 状況。

今日、企業との関係の必然性から解放されているような構成的権力の働きは一つとして想像することは出来ない。

資本主義的計画化の編み目の中に共産主義と力の要求が組み込まれるという可能性を構成的権力がある意味で破壊してしまった。・・・評議会主義は新たな予期せざる今日性を見いだす・・・管理関係を実質的に内化しなければならないという資本主義の必要性、・・
・均衡のとれた労働国家を樹立しうるという可能性。
レーニンは、企業規則とその批判を構成的権力の概念を構成する諸要素の複雑性の中に組み入れ、生産規則と民主主義の規則の総合をはかりながら、構成的権力の定義の西欧的歴史に終止符を打つ・・・生きた労働の構成的性格は、社会主義の中でも資本主義の中でも同様に企業規則の基盤として認識されなければならないものである。・・・この同じ構成的権力が…ポスト産業的な国家の現代的進化の中において要請され継承されるという事態が生じる。

マルクスとレーニン以後においては・・・解放は構成的権力なのである。…構成的権力は創設の強度であり、歴史の創設であり、世界の創設でもある。社会主義と手をたずさえて、企業と近代的な生産性の概念を新たな世界のラディカルな構成の計画そのものの中に吸収しながら再び三たび出現するのである。


7)力の構成


構成的権力は一つの主体である。

構成的権力の概念の歴史的持続性
第一のものは、ルネサンスの革命的原理の拡張と進化からの線的持続性 ? 資本主義の誕生と発展、資本主義によって社会に強制された組織形態といったものによってあらわになった権力の危機(社会の生産的力と国家の正当化との関係の危機)に対応し権力の合理化の必要性から登場したもの。
第二のものは、蓄積の持続ではなく、経路の持続であり、客観的形状の持続ではなく主体的な行動の持続である。それはスピノザがマルチチュードを構成する情念と呼んだものの持続である。(形而上学的、政治学的発展)歴史的発展の持続的断絶の持続性、集団的欲望やマルチチュードの表現を構成する力の永続的な再確立の持続性。

政治的なものの構成の緯糸は、社会的構成の決定力としての欲望の拡張の抗いがたい進歩によって支えられる。

民主主義的な生きた神。マルチチュードの力、構成的欲望の様々な段階、そしてこういった諸過程の濃密性や複雑性が結合と愛へと転化すること。

構成的権力は現実の中に潜り込み、戦争のなかや危機の中に潜り込むのであるが、これこそが世界の神性なのである。

創造的力は現代世界において「生産力」と呼ばれるものと同じほど具体的なものになり、そのことによって世界の二番目の相貌、完全に人工的な巨大な「第二の自然」を構築する。マルクスはマキアヴェリが新しい人間の特権と感じ取ったこの創造的緊張、そしてスピノザが欲望の絶対的力として形而上学的に描き出したこの創造的緊張を表現する。
彼はそれを現実態の客観化として、そして新しい世界の可能性として表現するのである。

民主主義へ向かっての構成的権力の緊張は、・・・創造の行為そのものであり、・・・絶対性の諸条件を具現化するのである。この絶対性は・・・人間が統治せんとする第二の自然なのであり、・・・我々を条件づける客体ではなくて、我々が全員で構築した集合的主体だからである。

構成的権力の限界
ユダヤ-キリスト教的な創造のヴィジョン
ある種の目的論的世界観、神学的な統一の影、神性を否定しながらもなお引きずり続けるあの統一性の誘惑、構成的権力は創造性を唯一の性質とするのではなくて、全方位的変移性という性質を持ってもいる。

社会とその基盤についての自然法主義的概念
それは単に一つの教義ではなくて、同時にその中で一連の意味や意義の決定が追求される一つの枠組みなのである。そして時には、それはその中に近代的合理性が閉じ込められるまぎれもない檻である。

超越論的観念論の伝統における力の無力化
ルソーからヘーゲルへとのびる理論的な線。
超越論的形式主義の場合、この理論は対象についての思考の可能性の諸条件に介入する。
カント的な形式主義は、・・・力とマルチチュードのの絆の問題域を破壊し、そこに政治的なものに対する倫理的なものの優位性の相貌を決定的に付与し、構成的権力を個人的な志向性の虚空の中に隔離してしまう。

構成的権力は、こうした限界を超えて、力として生き続け、マルチチュードとして自らを再組織化し続けることによって、未来に開かれた時間的次元のパラダイムとして現出する。

脱ユートピアの政治形態としての構成的権力の歴史哲学 ? それは厳密にいうと歴史の「非」ー哲学である。なぜなら、歴史的現実を構成する過程は、直接性に満ちあふれた予見不可能な断続的過程であり、ひとえに抵抗や拒絶や否定性だけが結びあわせることができ、しかるべき形を与えることができるような正真正銘の矛盾の織物だからである。

スピノザの構成的脱ユートピア
マルチチュードー力の関係の脱ユートピア化は愛の作用によって強化される集合的行為であり、人間の協業的な本質であり、実存者が絶対的なものへ向かってその限界を超えていく行動的な経験でもある。・・・必然と自由の断裂が存在論の中に挿入されていること、そしてその断裂が存在論を規定し、その存在論から永続性や前進的豊富化、刷新の力といったものが説明されている。

断絶としての、そして構成された権力にとってかわるものとしてのこの構成的主体の立場は、近代的合理性とそれに対応する主体性の通常の定義を超えた主体性とその合理性の立場を伴うものである。

近代性とは

個人的、集団的創造性を公に認めながらそれを世界の資本主義的生産様式の道具的合理性の中におき直そうという全体主義的思想の規定と発展の過程。
デカルトによって発案され、ヘーゲルによって完成された観念論的弁証法。
政治的なものをMudの乗り越えとして、そして権力を力の完遂として提起する。
マルチチュードが主体性として自己表現するあらゆる可能性を否定するもの。
Mudの力を政治的に否定し、社会的にはひたすら肯定する、社会的なものを政治的なものから切り離すことを任務とする社会学・経済学。
Mudへの恐れとしての近代性。

マルクスの主題
生きた労働の全方位-拡張的な創造性。
主体の建設 ? 主体は力の持続的な揺れであり、力が世界になりうるための実効的な可能性の持続的な形状化である。・・・主体は、それが造形しなおしながら-そして自らをも造型しなおしながら-作り出す世界を通して、それ自体として変容し続けもする。この過程の中で生きた労働は構成的権力になる。・・・そこにはもはや弁証法もなければ道具的理性もない。なぜならそこにはもはや究極目標がないからであり、・・また乗り越えというものもない。・・・ひとえに構成的権力だけが、そして意志の機能する定められた次元と闘争だけが、存在の行方を決定する。

構成的権力は存在を創造する力、言い換えれば現実、価値、制度、そして現実の製序といったものの具体的な相貌を創造する力、社会的なものと政治的なものを同一視し、それらを存在論的絆の中に結び付けることによって社会を構成する力である。


新たな合理性⇔近代的合理性

創造性⇔限界
決まった尺度はもはや存在せず、我々が測るべき現実を構築するまさにその時点において我々が構築する尺度だけが存在するのである。
手続き⇔機械
手続きは他者との関係における主体性の相貌全体の具体的な形式である。契約というものにまつわる構成的神話を解体し、その系譜を合理的に解釈し発展させるものである。
平等⇔特権
平等が疎外不可能な権利として現出するのはそれが構成的過程の存在論的な前提条件であり、現実的な状況でもあるということによる。
特権というものは生きた労働を構成する運動と矛盾するものである。
多様性⇔画一性
構成的権力は様々な特異性の統一性への還元としてではなくて、それらの特異性の交錯と拡張の場として形成される。
画一性は・・・生成変化の条件そのものを破壊する一要素として、どうしようもない欠陥を付与されて出現する。
協業⇔指令
協業はそれを通して特異性が新たなもの、富、そして力を再生産する形態であり、・・・新たな合理性の中心的な価値であり、またその神髄である。
指令はまさにこのような真理の欠如である。

生の新世界 ? 新たな合理性は新たな世界の建設に適合したものである。

政治的なものとは本当のところ協業的に作動する多数の特異性の存在論的力である。

あらかじめ与えられた共同体は存在しないし、全てを決定するような力も存在しない。・・・共同体は日々決定され再構築されるのであり、暴力はこの決定と再構築の一部をなすものである。

構成的権力の概念は革命の正常態を表現するものである。

旧来の支配階級が息も絶えだえに彼らの帝国の喪失に、その消失に、生の悲惨さを増大させ続ける行政的なルーチン・ワークの中でなすすべもなく立ち会っているという過ぎ去った時代のイメージ。

構成された権力がついに唯一の緯糸となってしまった過去の政治が、腐敗すると同時に残酷な世界として我々の前に立ち現れている。


自由の歴史、・・・それは戯れ言でしかあるまい、そうではなくて、解放の歴史、これこそがわれわれを待ち受けているのだ。

それは苦悩に満ちてはいるが、とてつもなく建設的で、抗いがたい魅力を持った脱ユートピアの作動である。

力の構成はマルチチュードの冒険そのものである。


構成的権力は、このような形のもとで、それ固有の力量を持って再出現するしかないということ。



「構成的権力 ? 近代のオルタナティブ」
アントニオ・ネグリ著より