「真理とディスクール」から『イオン』 | 宮本浩樹のブログ ― アーカイブ ―

「真理とディスクール」から『イオン』

大地から産まれたアテナイの初代の王エレクテウスの娘、クレウサ・・・
えー、ギリシャ神話を要約するのは手に負えません。
エウリピデスの「イオン」か、「真理とディスクール」そのものをお読みになって下さい。

“『オイディプス王』では、アポロンが最初から真理を語り、これから何が起きるかを正しく予言します。・・・人間は神が予言する宿命を回避しようと努めるのです。しかし最後には、アポロンが与えた証拠によって、オイディプスとイオカステは、自ら認めたくないと考えていた真理を発見します。”

“『イオン』では真理を発見しようとしているのは人間です。・・・わざと真理を隠そうとしているのはアポロンなのです。
『オイディプス王』における真理の問題は、いかにして盲目である人間が、神が語る真理の光によって、見たくないと思っていたものを見るかという道筋で解決されます。
『イオン』における真理の問題は、アポロンが沈黙するにも関わらず、いかにして人間んが知りたがっていた真理を(パレーシアを行使することによって)みずから発見するかという道筋で解決されるのです。”

クレウサがアポロンに手込めにされて産み、捨てた子がイオンその人である事が、
クレウサの、アポロン弾劾と、自己の弱さ、過ちを告発する自己告発の二部に渡るパレーシアの行使によって明らかにされる場面は圧巻。
神をも呪い、弾劾する「パレーシア」概念でもって、『オイディプス王』と『イオン』を並置し、分析するフーコーの〈問題構成〉は鋭いものがあります。

次回は「アンチ・オイディプス」の予定です。